「社長、取引先の担当者から、こんなシートが送られてきたんですけど……」
総務の担当者が持ってきた、A4用紙数枚にわたる細かいチェック項目。そこには「ISMSまたはPマークの取得状況」「情報セキュリティ規定の有無」といった、見慣れない言葉がズラリ。これ、正直言って心臓に悪いですよね。私も現場で、このシートを前に「うわ、これ書けないと取引切られるのか?」と顔を青くしている社長を何人も見てきました。
あわててネットで「Pマーク 取得」と検索して、コンサル会社から「費用は200万円、期間は1年です」なんて見積もりを出され、さらに胃が痛くなる……。でも、ちょっと待ってください。実は、多くの中小企業にとって、いきなりPマークを目指すのは「近所のコンビニに行くのにF1カーをチャーターする」ようなものです。もっと身の丈に合った、それでいて取引先に「うちはちゃんとやってます!」と胸を張れる強力な味方があるんです。
- 大手企業からセキュリティ対策の証明を求められている
- Pマークを取りたいが、費用も人手も全く足りない
- そもそも自社のセキュリティが今のままでいいのか不安
- 「何かロゴマークが欲しい」という漠然とした要望がある
- 情シスなんていないし、社長の自分がやるしかない
- 取引停止や信用失墜という「最悪の未来」を回避したい
その解決策が、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が推進している「SECURITY ACTION(セキュリティアクション)」の二つ星です。これ、国(経産省管轄のIPA)が認めている制度なのに、意外と知られていないんです。お金をかけずに、かつ最短距離で信頼を勝ち取るための「魔法のロゴ」について、現場の裏話も交えてお話しします。
この記事のゴールは、Pマークという「重荷」を一旦脇に置き、明日から「SECURITY ACTION 二つ星」のロゴを名刺に入れるための具体的なステップを理解することです。
中小企業の社長を苦しめる「Pマーク取得」の罠

数百万の費用と「紙の山」に殺される
Pマーク(プライバシーマーク)を維持するには、驚くほどのお金と手間がかかります。審査費用だけで数十万円、コンサルを入れたら100万円単位。さらに、数年ごとの更新……。これ、10〜50名規模の中小企業にとっては、利益をまるごと吹き飛ばすレベルの打撃です。
それだけじゃありません。一番キツいのは「運用」です。入退室の記録、PCの持ち出し管理、全社員への定期的な教育。これらをすべて「証拠(記録)」として残さなければなりません。以前お会いした社長は、「セキュリティを守るための仕事なのか、記録を付けるための仕事なのか分からなくなった」と、うつむき加減で話していました。情シスがいない会社でこれをやると、社長か総務が本業を捨てて書類仕事に追われることになります。これでは本末転倒ですよね。
実は「個人情報」に特化しすぎている
ここ、意外と誤解されがちですが、Pマークはあくまで「個人情報の取り扱い」に対するマークです。もちろん大事なことですが、今の時代に求められているのは、サイバー攻撃から会社を守る「情報セキュリティ全体」の話。取引先が本当に心配しているのは、「お宅の会社からウイルスが入ってこないか?」「ランサムウェアでデータが消えて納期が遅れないか?」という点です。Pマークさえあれば安心、というのは昔の話になりつつあります。
救世主?「SECURITY ACTION」二つ星とは何か
お金がかからない「自社宣言」の仕組み
SECURITY ACTIONは、中小企業が「自らセキュリティ対策に取り組むこと」を宣言する制度です。Pマークとの最大の違いは、外部の厳しい審査を受けるのではなく、自分でチェックして「うちはここまでやってます!」と宣言する点にあります。だから、登録料は無料。コンサルも(正しく進めれば)不要です。
「自分で宣言するだけなら意味ないんじゃない?」と思うかもしれません。でも、IPAという公的な機関のサイトに社名が載り、名刺やパンフレットに専用のロゴマークを入れられる効果は絶大です。取引先の担当者も「あ、SECURITY ACTIONの二つ星なら、最低限のラインはクリアしているな」と判断してくれます。共通言語があるだけで、あの面倒なチェックシートの回答がグッと楽になるんです。
一つ星と二つ星、どっちを目指すべき?
この制度には「一つ星」と「二つ星」があります。一つ星は「5つを心がけます」という、いわばスローガンレベル。正直、ビジネスの現場で「信頼」として使うには少し物足りません。私たちが絶対におすすめするのは「二つ星」です。二つ星は、自社の現状を25項目でチェックし、さらに「情報セキュリティ基本方針」を公開することが条件になります。この「基本方針」を持っているかどうかが、プロの目から見ても「ちゃんとした会社か」の分かれ道になります。
中小企業が「攻め」の営業に使うなら、迷わず「二つ星」一択です。
二つ星獲得への最大の壁「25項目の自己診断」の乗り越え方

「できていない」ことを認める勇気
二つ星の要件である「5分でできる!情報セキュリティ自叙診断」という25個のチェック項目。これ、実際にやってみると「……あれ、できてないな」という項目が必ず出てきます。「OSは常に最新か?」「パスワードは適切か?」「USBメモリの管理は?」といった基本中の基本なのですが、現場の社長さんは「そんなの社員に任せているから分からない」と仰ることが多いです。
でも、ここで嘘をついて全部「はい」にチェックしても意味がありません。この診断の目的は、自社の「弱点」を見つけることです。現場でありがちなのが、社長のPCだけアップデートが止まっていたり、退職者のアカウントが残っていたりするケース。これを機に「うちはここがガバガバだったんだ」と認識することが、本当の意味でのセキュリティ対策の第一歩になります。
「情報セキュリティ基本方針」をどう作るか
「方針なんて、難しくて書けないよ」と、ここで手が止まる社長が多いのですが、安心してください。IPAがテンプレート(ひな形)を用意してくれています。それを自社に合わせて書き換えるだけでいいんです。大事なのは、美辞麗句を並べることではなく、「私たちは、お客様のデータを守るために、こういうルールで頑張ります」という姿勢を社内外に示すことです。この方針をホームページにアップした瞬間、あなたの会社は「ITを分かっている会社」へとランクアップします。
PマークとSECURITY ACTION、どちらを選ぶべきか?
社長が「違い」を一目で判断するための比較表
結局のところ、自分の会社にはどちらが必要なのか。それを判断するための基準を表にまとめました。100名以下の規模なら、まずは右側(SECURITY ACTION)から始めるのが、経営判断として圧倒的に「正解」です。
| 比較項目 | Pマーク(プライバシーマーク) | SECURITY ACTION(二つ星) |
|---|---|---|
| 取得コスト | 100万〜200万円(コンサル込) | 0円(無料) |
| 審査の有無 | あり(第三者による厳しい審査) | なし(自社宣言とIPAへの届出) |
| 運用負担 | 非常に重い(大量の記録が必要) | 普通(ルール作りと実施のみ) |
| 主な対象 | BtoC企業、大規模案件入札 | すべての中小企業、BtoB取引 |
| メリット | 公的な信頼性、入札条件のクリア | 取引先へのアピール、補助金加点 |
「補助金」の加点対象になるという、おいしい話
社長なら「IT導入補助金」という言葉を聞いたことがあるはず。実は、SECURITY ACTIONを宣言していることが、この補助金の採択率を上げる「加点項目」になっているんです。つまり、セキュリティへの取り組みを宣言するだけで、他の会社よりも有利に補助金をもらえる可能性が高まるということ。これをやらない手はありませんよね。
コストゼロで、信頼と「補助金の権利」を同時に手に入れられるのがこの制度の凄さです。
【今日からできる】SECURITY ACTION 二つ星への3ステップ
ステップ1:IPAのサイトから「自己診断」シートをダウンロードする
まずは現状把握です。「IPA 5分でできる情報セキュリティ自叙診断」と検索して、チェックシートを手に入れてください。25項目を埋めるのに、文字通り5分もかかりません。もし「いいえ」が多いようなら、それがあなたの会社の伸び代です。UTMなどのセキュリティ機器を入れる際の、判断基準にもなります。
ステップ2:基本方針を作り、ホームページで公開する
これが二つ星のキモです。前述のテンプレートを埋め、「情報セキュリティ基本方針」を完成させましょう。自社サイトがない場合は、社内の掲示板に貼るだけでもOKですが、取引先へのアピールを考えるなら、固定ページとして1枚作っておくのがベストです。
ステップ3:専用サイトから「ロゴマーク」の使用を申し込む
最後に、SECURITY ACTIONの公式サイトから宣言を行います。手続きが終わると、あのブルーの二つ星ロゴが使えるようになります。これを名刺に入れたり、パンフレットに入れたりすることで、対外的な「武装」は完了です。営業担当者に「うちはセキュリティもしっかり宣言してますから」と言わせるだけで、商談の成約率が変わるかもしれません。
まとめ:まずは「守っている自分」を可視化しよう

セキュリティ対策は、やり始めるとキリがありません。でも、何もしないまま「うちは大丈夫だろう」と高を括っているのが、経営者として一番のリスクです。万が一の事故が起きた時、「何も宣言していなかった会社」と「二つ星を宣言して努力していた会社」では、世間や取引先の風当たりは天と地ほど変わります。
Pマークという高い壁に絶望する前に、まずはこの「SECURITY ACTION 二つ星」という階段を一段上ってみてください。その一歩が、将来の大きなトラブルを防ぎ、結果として会社の利益を守ることに繋がります。もし「診断項目の中にあるUTMやウイルス対策ソフト、結局どれがいいの?」と迷ったら、いつでも私たちのデータベースを頼ってくださいね。社長の不安を「安心」に変えるために、私たちはここにいます。
お金をかけずに信頼を勝ち取る。今日、その一歩を踏み出すことが、1年後の会社の未来を大きく変えるはずです!

