「うちは税理士さんにお願いしてるから大丈夫です」
この言葉、正直に言うと現場で何度も聞いてきました。そして、そのあとヒヤッとするケースも何度も見ました。
電子帳簿保存法(いわゆる電帳法)。ニュースで見た、税理士に言われた、会計ソフトも変えた。だから安心。
でも実は――
“会計処理”と“データの保存体制”は別の話なんです。
- 請求書はPDFで保存しているが、検索はできない
- メール添付の請求書は担当者のPCに残っている
- タイムスタンプって何か分からない
- マイナンバーもなんとなくクラウドに置いている
- 税務調査が来たら「税理士さんが何とかしてくれる」と思っている
これ、どれか一つでも当てはまったら要注意です。
電帳法の責任主体は「会社」です。税理士ではありません。
この記事では、税理士任せにしていると何が抜け落ちるのか、IT側から見た致命的な盲点と、社長が明日やるべき具体行動まで整理します。
なぜ「税理士任せ」が危険なのか

税理士の守備範囲は“税務”であって“社内IT管理”ではない
まずここが一番の誤解です。税理士は税務の専門家です。申告や仕訳、税法の解釈が仕事です。
一方で、請求書データをどこに保存するか、誰がアクセスできるか、バックアップはあるか――
これは会社のIT管理の話です。
現場では「税理士に聞いたら大丈夫と言われた」と安心している社長がいますが、よく聞くと「会計処理上は問題ない」という意味だった、ということが多いです。
保存体制まで面倒を見ている税理士は、実はそれほど多くありません。
責任を取るのは最終的に会社
税務調査が入ったとき、聞かれるのは「御社の保存体制はどうなっていますか?」です。
「税理士に任せています」は通用しません。
なぜなら、電子データの管理主体は会社だからです。
実際に、調査時に検索できず、その場でデータを探して社長の顔色が変わる場面を何度も見ました。あの空気は胃が痛くなります。
結論:税理士任せはダメではありませんが、「保存体制の確認」は社長の仕事です。
IT側から見た電帳法の本当の論点
「保存している」と「要件を満たしている」は違う
PDFで保存していればOK、という誤解が本当に多いです。
電帳法では、検索できること、改ざんされていないことがポイントになります。
例えば「取引先名と日付で探せますか?」と聞かれて、フォルダを一つずつ開いて探すのはアウト寄りです。
検索要件を満たしていないケースは、中小企業でかなり見かけます。
メール添付請求書の管理が抜け落ちる
紙の請求書はスキャンしている。でもメール添付は担当者の受信箱に残りっぱなし。
これ、よくあります。
担当者が退職したらどうなるか。パソコンが壊れたらどうなるか。そこまで想像されていないことが多いです。
電帳法は「受け取った電子データ」が対象です。ここが盲点です。
バックアップとアクセス管理が軽視される
データをクラウドに置いているから安心、と思いがちです。
でも、誰でも削除できる状態になっていませんか?
誤って削除した場合の復旧手順、確認したことはありますか?
IT側から見ると、「保存場所」より「運用ルール」が危ない会社が多いです。

マイナンバー管理はさらにシビア

「クラウドに入れているから安全」は幻想
マイナンバーは、電帳法よりも管理が厳しい情報です。
アクセス制限、保管期間、廃棄方法まで求められます。
現場では「給与ソフトに入っているから大丈夫」と言う社長もいますが、閲覧権限の確認をしていないケースが多いです。
総務のパートさん全員が見られる状態、実は珍しくありません。
退職者データの放置が多い
退職者のマイナンバー、削除していますか?
「そのまま残っている」が大半です。
保管期限を過ぎても残していると、情報漏えい時のリスクが跳ね上がります。
漏えいした瞬間、信用は一気に崩れます。取引停止も現実的です。
注意:マイナンバーは“持っているだけで責任が発生する情報”です。

よくある誤解と現場あるある
「うちは小さい会社だから大丈夫」
従業員20名でも、取引先は100社以上あることも普通です。
請求書のやり取りも年間数百件。十分対象です。
むしろ小さい会社ほど、管理が属人化しやすいです。
「あの人しか分からない」は一番危ない状態です。
「会計ソフトを入れ替えたから完璧」
ソフトは道具です。
設定と運用を間違えれば、要件を満たしません。
実際に、初期設定のまま使っていて検索条件が足りないケースもありました。
導入=対応完了ではありません。
| 状態 | 安全寄り | 危険寄り |
|---|---|---|
| 請求書保存 | 検索可能・権限制限あり | フォルダ保存のみ・誰でも削除可 |
| メール管理 | 共有管理・自動保存 | 担当者PCのみ |
| マイナンバー | 閲覧者限定・期限管理あり | 全員閲覧可・期限不明 |
社長が明日やるべき具体行動

税理士にこの3つを聞く
明日、税理士さんにこう聞いてください。
- 電子データの検索要件は満たしていますか?
- メール請求書の保存方法はこれで正しいですか?
- マイナンバーの保管期限管理はできていますか?
答えが曖昧なら、そこが確認ポイントです。
社内で確認すること
担当者に「退職者のマイナンバーはどうしていますか?」と聞いてみてください。
一瞬止まったら、ほぼアウトです。
そして、請求書を1件ランダムに指定して「3分で出せる?」と試してください。
出せないなら、改善余地大です。
最後に

電帳法もマイナンバーも、社長を困らせるための法律ではありません。
でも、対応を間違えると一番困るのは社長です。
税理士は味方です。ただし、丸投げは違います。
今日やるべきは、「現状を聞くこと」だけです。
「任せている」ではなく「確認している」と言える状態に、今日から変えましょう。

