物理的な距離をゼロに。拠点間VPNで本支店のデータを安全・快適に共有する方法

「社長、本社のサーバーにあるあの資料、今すぐ見たいんですけど……」

支店や工場、あるいは別の営業所にいる社員さんから、こんな電話がかかってくることはありませんか?そのたびに、本社の誰かがメールで送ったり、クラウドにアップしたり。ひどい時には「USBメモリに入れてバイクで届ける」なんて、昭和のような光景が令和の今でもあちこちの現場で繰り広げられています。正直、これって時間の無駄以外の何物でもないですよね。私も現場でこの話を聞くたび、もったいなくて胃がキリキリします。

離れた拠点同士でデータをやり取りするストレス。これは単なる「不便」ではありません。もし、社員がしびれを切らして、勝手に無料のファイル転送サービスを使い始めたら?もし、そのUSBメモリを移動中に紛失してしまったら?取引先からの信用は一瞬で吹き飛び、最悪の場合は「セキュリティ管理ができていない会社」として取引停止を突きつけられる……。そんな最悪の未来は、すぐそこまで来ているかもしれません。

  • 支店から本社の共有フォルダを開こうとすると、表示が遅すぎて仕事にならない
  • メールの添付ファイルが重すぎて、送受信エラーが頻発している
  • 「誰が最新のファイルを編集したか」が分からず、古いデータで上書きしてしまう
  • セキュリティが不安で、拠点間でのデータのやり取りを制限している
  • VPNという言葉は聞いたことがあるが、設定が難しそうで避けてきた
  • 「物理的に離れているから仕方ない」と諦めている

もう、そんな不毛な我慢はやめにしましょう。離れた場所にあるオフィスを、まるで見えない専用通路で繋ぐ「拠点間VPN」という仕組みを使えば、物理的な距離はゼロになります。情報システム部がいない中小企業でも、正しい「箱(ルーター)」を選んで設置するだけで、劇的に業務効率が変わるんです。

この記事のゴールは、拠点間VPNを導入して、本社と支店のデータを「安全・高速・当たり前」に共有するための最短ルートを理解することです。

目次

拠点間VPNとは何か?離れたオフィスを「1つの部屋」にする魔法

Vpn concept on dark background

インターネットの中に「自分たちだけの専用トンネル」を掘る

VPN(仮想専用線)を簡単に言うなら、一般道であるインターネットの中に、御社専用の「地下トンネル」を掘るようなものです。一般道は誰でも通れますし、覗き見されるリスクもありますが、トンネルの中なら関係者以外は入れません。しかも、中を通るデータはすべてガチガチに暗号化されるので、万が一覗かれても中身は分かりません。

特に「拠点間VPN」がすごいのは、個人のパソコンでいちいちログイン操作をしなくても、本社のルーターと支店のルーターが勝手に24時間トンネルを維持してくれる点です。社員さんは、本社にいる時と全く同じ操作で、支店から本社のサーバーにアクセスできるようになります。これが実現した時の「え、こんなに簡単に繋がるの?!」という社員さんの驚く顔、何度見ても嬉しいものです。

なぜ「クラウド」だけではダメなのか?

「今はクラウドストレージがあるからVPNなんていらないでしょ?」と仰る社長もいます。確かに一理ありますが、現場はそう単純ではありません。設計図のような巨大なCADデータや、数千行のエクセルファイルをクラウド経由で開こうとすると、ネット回線の速度に左右されて「開くまでに3分かかる」なんてことがザラに起きます。これが1日に10回あれば、それだけで年間どれほどの労働時間がドブに捨てられているか計算してみてください。正直、ゾッとしますよね。

拠点間VPNなら、ルーター同士が常に繋がっているため、LANケーブルを刺しているような感覚で操作できます。また、社内にある基幹システム(販売管理や在庫管理など)をそのまま支店から使えるようになるメリットは、クラウド化よりも遥かにコストパフォーマンスが高いケースが多いんです。

拠点間VPNは「ログインの手間」と「通信の不安」を同時に解消する、中小企業のデータ共有の完成形です。

導入前に知っておきたい「ハードウェアVPN」の圧倒的なメリット

ソフトウェアVPNのような「個別の設定」がいらない

VPNには、パソコンにソフトを入れて繋ぐタイプもありますが、拠点間を繋ぐなら断然「ハードウェア(VPNルーター)」タイプがおすすめです。なぜなら、社員が増えるたびに設定をする必要がないからです。一度ルーター同士を繋いでしまえば、そのルーター配下に繋がっているパソコンはすべて自動的にVPN経由で通信ができるようになります。情シスがいない会社にとって、この「運用の手間がかからない」というのは、何物にも代えがたいメリットです。

「繋ぎっぱなし」が業務を止めない秘訣

ソフトタイプだと、繋ぎ忘れたり、接続が切れるたびに再ログインが必要だったりします。これが現場の「面倒くさい」を誘発し、結局使われなくなる原因になります。その点、法人向けのVPNルーターは「繋ぎっぱなし」が前提。朝出社してパソコンを立ち上げた瞬間から、本社のファイルサーバーが見えている。この「当たり前」の環境こそが、本支店間の心理的な距離を縮めてくれるんです。現場の社員さんからは「本社の人にいちいち電話して送ってもらう気兼ねがなくなった」と感謝の声をよく聞きます。

比較項目ソフト型VPN拠点間VPN(ハードウェア)
設定の手間PC1台ごとに設定が必要ルーター2台の設定のみ
接続の手間使うたびにログインが必要常時接続(意識しなくて良い)
安定性PCの負荷に左右されるルーター専用機なので非常に安定
推奨環境個人のリモートワーク本支店、工場との常時接続

「機械を置くだけ」で拠点間の壁がなくなるのが、ハードウェアVPNの最大の強みです。

【失敗談】「安物ルーター」で拠点間VPNを組もうとした社長の末路

Confused businessman with stressed and worried about working mistake and problems.

家庭用ルーターでは「トンネルの強度」が足りない

以前、ある製造業の社長さんが「家電量販店で買ってきた数千円のルーターにもVPN機能がついていたから、それで支店と繋いでみたよ」と仰っていました。結果はどうだったか。繋がるには繋がりましたが、1週間に一度は必ず接続が切れ、そのたびにルーターのコンセントを抜き差しして再起動……。社員さんは「やっぱりVPNは使い物にならない」と諦めモード。これ、典型的な「安物買いの銭失い」です。家庭用は数人での利用を想定していますが、オフィスでの多人数・高負荷な通信には耐えられません。機械が悲鳴を上げて止まってしまうんです。

「スループット」という名の通信速度の壁

もう一つの落とし穴が「速度」です。VPNはデータを暗号化して送るため、ルーターに非常に大きな計算負荷がかかります。安いルーターや古い機種だと、この計算処理が追いつかず、回線自体は速いのにVPNを通すと極端に遅くなることがあります。カタログに書かれている「最大速度」は、VPNを使わない時の数字。私たちが製品を選ぶときは、必ず「VPNスループット」という、暗号化をした時の実効速度をチェックします。ここを見誤ると、せっかくの投資が台無しになってしまいます。

拠点間VPNは、信頼性の高い「法人専用機」を選ばないと、トラブル対応で社長の時間が奪われ続けることになります。

UTMとVPNルーター、どちらを拠点間に置くべきか?

本社は「守り」も兼ねたUTM、支店は「繋ぐ」ルーター

理想的な構成は、データが集まる本社にUTM(統合脅威管理)を置き、支店にはVPN機能に優れたルーターを置くパターンです。最近のUTM(FortiGateなど)は、VPN機能も非常に強力。本社側のUTMが関所としてウイルスをシャットアウトしつつ、支店からの安全な通信だけを通す。この構成なら、セキュリティと利便性を両立できます。支店側にもUTMを置くのがベストですが、予算が限られているなら、まずは支店には「VPN専用の強いルーター」を置くだけでも、今の不安定な状況からは脱却できます。

同じメーカーで揃えるのが「プロの裏技」

意外と知られていないのが、メーカーの相性です。A社のルーターとB社のUTMでVPNを組むことも技術的には可能ですが、設定が恐ろしく面倒になり、トラブル時の原因切り分けも難しくなります。本社も支店も同じメーカーの機器で揃えれば、ボタン一つで設定が完了するような「自動VPN設定」が使える機種も多いです。情シスがいないなら、迷わず「同じメーカーで揃える」ことを選びましょう。これで保守の手間が10分の1になります。

メーカーを揃える。これだけで「繋がらない」トラブルの8割は回避できます。

明日から始める「拠点間データ共有」の改善ステップ

ステップ1:各拠点の「現在のネット環境」を確認する

まずは、本社と各支店のネット回線が何を使っているか調べてください。VPNを張るには、少なくともどちらかの拠点のIPアドレスが固定されているか、メーカー独自のダイナミックDNSという機能が使える必要があります。今の契約書の束を引っ張り出して、「固定IPオプション」がついているか確認するだけでOK。分からなければ、弊社のデータベースを見ながら一緒に確認しましょう。

ステップ2:共有したいデータの「重さ」と「人数」を把握する

「どんなファイルを、何人が同時に使いたいのか」を、社員さんに聞いてみてください。単なるエクセルだけなら安価なルーターでも大丈夫ですが、CADデータや高画質画像、動画などを扱うなら、処理能力が高いハイエンド機が必要です。このヒアリングなしに機器を買うのは、航海図なしに海に出るようなもの。現場の「本当の悩み」を吸い上げることから全ては始まります。

ステップ3:Security Choiceのデータベースで「適正価格」を知る

「VPNルーターなんて、いくらするのか見当もつかない」という社長、安心してください。当サイトのデータベースには、中小企業に最適なルーターの実勢価格や、リース相場の目安が公開されています。業者の言い値で契約する前に、まずは相場を知ること。これだけで、数十万円のコストダウンに繋がることもあります。自分たちで設定する自信がなければ、設置・保守まで含めたプランがある機器を探すことも可能です。

「今の不便さ」を放置するコストよりも、VPNを導入するコストの方が遥かに安いことに気づくはずです。

まとめ:拠点の壁を壊して、一つのチームになろう

「本社に聞かないと分からない」「支店は対応が遅い」……。そんな拠点の壁が生む軋轢は、実は情報共有の仕組みが整っていないだけのことがほとんどです。拠点間VPNは、単なるネットワーク技術ではありません。離れて働く社員同士が、同じ机を並べて仕事をしているような一体感を生み出す「経営のインフラ」なんです。

セキュリティを万全にしつつ、業務スピードを最大化する。この両立ができるのは、正しいVPNの構築だけです。もし「うちの環境で本当に繋がるのかな?」「どのメーカーを選べばいいか分からない」と少しでも迷ったら、ぜひ当サイトの「無料診断(セキュドック)」を活用してください。あなたのオフィスの図面や要望を聞きながら、プロの視点で最適な構成を提案します。物理的な距離に縛られる時代は、もう終わりにしましょう。

支店と本社の間に「見えない専用通路」を。今日その決断をすることが、会社全体の生産性を劇的に変える第一歩です!

この記事を書いた人

大手OA機器会社出身のメンバーを中心に、中小企業のIT領域をトータルで支援。現場での導入・施工経験に基づき、UTMやWi-Fiなどのネットワーク機器の選び方を発信。現在も現場の最前線で、企業のITインフラ構築に携わっています。

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