「今使っているヤマハのルーター、RTX830の後継が出たらしい」。
そう聞いて調べ始めた方に向けて、RTX840(2025年8月発売)が何者なのかを、メーカー公式の数字だけで整理します。
この記事では、公式価格と実勢価格、RTX830・RTX1300・NVR510との違い、そして「RTX830はもう買えないのか」という疑問まで順に説明します。製品の細かいスペックはRTX840の製品ページにまとめています。
※不要な買い替えはおすすめしません。今の機器で足りる場合はその旨をお伝えします。
RTX840の正体:RTX830の「置き換えやすい後継」
RTX840は、小規模拠点向けのギガアクセスVPNルーター(社内と社外を安全につなぐ通信機器)です。ヤマハは、RTX830を使っている環境から運用を変えずに置き換えられる製品として案内しています。
見た目と設置条件はRTX830とほぼ同じです。サイズは220×43.5×160mm、重さ1.1kg、ファンレス(冷却ファンなし=無音)、最大消費電力12W。事務所の棚の上にそのまま置き換えられます。
中身で変わったのは、主に次の点です。
- RAM(作業机の広さ)が256MB → 1GBに増えた
- NATセッション数が65,534 → 150,000に増えた
- Flash ROMが32MB → 64MBに増えた
一方で、速度の数字は変わっていません。最大スループットは2.0Gbit/s、IPsec(拠点間VPN)は1.0Gbit/sで、RTX830と同じです。ここが誤解されやすい点なので、次の表で確認してください。
価格:公式価格と実勢価格の目安

| 機種 | 希望小売価格(税込) | 実勢価格の目安 | 発売 |
|---|---|---|---|
| RTX840 | 136,400円【要確認:121,000円との差異】 | 約75,000〜108,000円 | 2025年8月 |
| RTX830 | 119,900円 | 約65,000〜95,000円 | 2017年10月 |
| RTX1300 | 295,900円 | ― | 2022年9月 |
| NVR510 | 84,700円 | ― | 2016年9月 |
※出典:ヤマハ各製品「仕様」ページ(希望小売価格・発売時期)、価格.com(実勢価格の目安・2026年9月時点)準拠
スペックを社長の言葉に翻訳すると
NATセッション数150,000=「同時に開ける通り道の数」
NATセッションとは、社内のパソコンからインターネット上のサービスへ出ていく通信の「通り道」の数です。1台のパソコンがWebサイトを1つ開くだけで、この通り道を数十本使います。
この数が足りなくなると、「回線は速いはずなのに、朝の時間帯だけ動かない」「クラウドの画面が固まる」という症状が出ます。RTX840はここがRTX830の約2.3倍になりました。Microsoft 365やクラウド会計、Web会議など、常時つなぎっぱなしのサービスが増えた会社ほど効いてきます。
VPN対地数20=「同時につなげる拠点・社員の数」
RTX840のVPN対地数は合計20(IPsec 20、L2TP/IPsec 20、PPTP 4)です。ここはRTX830と同じで、増えていません。拠点数やテレワークの同時接続数を大きく増やしたい会社は、RTX840に替えても上限は広がらない点に注意してください。
全ポート1ギガ=「10ギガ回線は活かせない」
RTX840のポート構成はLAN4ポート+WAN1ポートで、すべて1000BASE-T(1ギガ)です。10ギガ対応のポートはありません。フレッツ光クロスのような10ギガ回線を契約していても、RTX840では1ギガまでしか通せません。
RTX1300・NVR510・RTX830との違い(同じ指標で比較)
| 項目 | RTX840 | RTX830 | RTX1300 | NVR510 |
|---|---|---|---|---|
| 最大スループット | 2.0Gbit/s | 2.0Gbit/s | 9.9Gbit/s | 2.0Gbit/s |
| IPsecスループット | 1.0Gbit/s | 1.0Gbit/s | 3.8Gbit/s | ― |
| NATセッション数 | 150,000 | 65,534 | 250,000 | ― |
| VPN対地数 | 20 | 20 | 100 | 最大4(L2TP/IPsecまたはPPTP) |
| RAM | 1GB | 256MB | ― | 256MB |
| 10ギガ対応 | なし | なし | 10Gコンボポート2 | なし |
| ひかり電話 | 非対応 | 非対応 | 非対応 | 対応(TEL2ポート・小型ONU対応) |
| 冷却ファン | ファンレス | ファンレス | ファンあり | ファンレス |
| 希望小売価格(税込) | 136,400円 | 119,900円 | 295,900円 | 84,700円 |
※出典:ヤマハ各製品「仕様」ページ準拠(スループットは各社公表の測定条件による値。RTX840・RTX830のIPsecはAES+SHA1利用時の双方向測定値)
判断はシンプルです。
- ひかり電話を1台にまとめたい → NVR510(電話機能はRTXシリーズにはありません)
- 10ギガ回線・拠点が多い・本社側に置く → RTX1300(ただしファンの音があるため、執務室への設置は要検討)
- 小さな拠点や事務所1か所で、クラウド利用が増えた → RTX840
RTX830の販売終了・サポート終了はどうなる?
ヤマハの「修理対応終了予定/生産完了品」ページにRTX830の記載はありません。同ページには「生産終了後 最長5年間(以下に記載の期限まで)は修理を行う予定」という方針が示されています。つまり、仮に明日生産終了が発表されたとしても、修理対応はそこからさらに数年残る見込みです。
実際の例として、同ページではRTX1210が2021年3月31日に生産完了、2026年9月30日に修理受付終了と案内されています(最新の日付は必ず同ページでご確認ください)。RTX1210をまだ現役で使っている会社は、こちらの方が先に手を打つべき状況です。
まとめると、RTX830ユーザーの判断はこうなります。
- 今のRTX830で困っていない → 急いで替える理由はありません
- クラウド利用が増えて動きが重い/夕方に不安定 → RTX840への入れ替えは合理的
- 故障した・保証が切れて久しい → 修理より入れ替えの方が早いことが多い
RTX840の「評判」をどう見るか
発売から日が浅いため、ネット上の評価はまだ固まっていません。価格.comのユーザーレビューは2件(平均3.38/2026年9月時点)で、判断材料にするには少なすぎます。
そのため、現時点では「口コミで選ぶ」のではなく、公式の数字と、RTX830からの置き換えやすさで選ぶのが現実的です。当サイトの見方は次のとおりです。
| 評価できる点 | 物足りない点 |
|---|---|
| RTX830と同じ設置条件(ファンレス・同サイズ)のまま中身が強化された | 速度の数字(2.0Gbit/s・IPsec 1.0Gbit/s)はRTX830から据え置き |
| NATセッション数が約2.3倍で、クラウド多用の環境に余裕ができた | VPN対地数20は据え置き。拠点増には対応できない |
| 実勢価格が7万円台からと、RTX1300より大幅に安い | 10ギガ回線には対応しない |
※出典:ヤマハ「RTX840 仕様」「RTX830 仕様」、価格.comのレビュー件数(2026年9月時点)準拠。評価欄の見解は当サイトによるもの
なお、RTXシリーズはあくまでルーター(通信の交通整理)です。メールの添付ファイルやWeb経由のウイルス検査といった対策は、UTM(ネットワークの門番)の担当になります。ルーターを新しくしてもウイルス対策の穴は塞がらない、という点は押さえておいてください。
向いている会社/向かない会社

| RTX840が向いている | RTX840では力不足・過剰 |
|---|---|
| 社員10〜50名程度の事務所1〜数拠点 | VPNで結ぶ拠点を20以上に増やす予定がある(→RTX1300など) |
| クラウドサービスの利用が増え、通信が重くなってきた | 10ギガ回線の速度を活かしたい(→RTX1300) |
| RTX830を使っていて、運用を変えずに入れ替えたい | ひかり電話もまとめたい(→NVR510) |
| 静かな執務室に置く(ファンレスが必要) | 今のRTX830で特に不満がない(→そのまま継続でよい) |
※出典:ヤマハ各製品「仕様」ページの数値に基づく当サイトの整理
※上位機種や長期リースを無理におすすめすることはありません。
よくある質問(FAQ)
Q. RTX840はRTX830の後継機ですか?
ヤマハはRTX840を、RTX830から運用を変えずに置き換えられる小規模拠点向けの製品として案内しています。実際、サイズ・ファンレス設計・スループットの数値はRTX830とほぼ同じで、RAMが256MBから1GBへ、NATセッション数が65,534から150,000へ増えています。ただし2026年9月時点で、ヤマハはRTX830の販売終了を公表していません。
Q. RTX830からRTX840に替えると、設定はやり直しになりますか?
ヤマハはRTX830からの置き換えを想定した製品として案内していますが、今の設定をどこまでそのまま移せるかは構成によって異なります。切り替え当日にいきなり入れ替えるのではなく、事前に設定内容を確認し、拠点間VPNやテレワーク接続の試験を済ませてから切り替えることをおすすめします。
Q. RTX840とRTX1300、どちらを選べばよいですか?
判断の分かれ目は3つです。VPNで結ぶ拠点が20を超えるか、10ギガ回線を使うか、設置場所でファンの音が問題になるか。いずれも当てはまらない小規模拠点であれば、価格差が大きいRTX840で十分です。RTX1300は最大スループット9.9Gbit/s、NATセッション数250,000、VPN対地数100と余力が大きい代わりに、希望小売価格は295,900円(税込)です。
Q. RTX830はもう買えないのですか?
2026年9月時点で、ヤマハはRTX830の販売終了日もサポート終了日も公表しておらず、修理対応終了予定の一覧にも記載はありません。ヤマハの方針は生産終了後最長5年間の修理対応です。販売終了を理由に買い替えを迫られている場合は、根拠となる公式の案内があるかを確認してください。
Q. 本体価格のほかに、どんな費用がかかりますか?
初期設定費、拠点間VPNの構築費、既存機器からの切り替え作業費、保守費が別にかかるのが一般的です。ルーター本体が安く見えても、設定費の付け方で総額は大きく変わります。見積もりを受け取ったら、本体・作業・保守の内訳が分かれているかを最初に確認してください。
まとめ
覚えておくべきことは3つです。
- RTX840はRTX830の「頭脳強化版」。RAM4倍・NATセッション約2.3倍で、クラウド利用が増えた事務所向き。速度とVPN対地数は据え置き
- 実勢価格は7万〜11万円前後。定価ではなく実勢価格を基準に見積もりを比べる
- RTX830の販売終了・サポート終了は未公表。今困っていなければ急いで替える必要はない
導入総額の考え方はYAMAHA VPNルーターの価格ガイド、RTX840の詳しいスペックはRTX840の製品ページをご覧ください。

