FortiGateのSSL-VPNが使えなくなる?【2026年】FortiOS 7.6.3以降のIPsec移行ガイド|法人の費用・見積もりの注意点

「FortiGate(フォーティゲート)のファームウェアを最新にしておきました」

――保守業者からのこの一言で、翌朝から社員が社外から社内につなげなくなる。いま、そんなことが実際に起こりえます。

理由はひとつです。FortiGateの基本ソフト「FortiOS(フォーティオーエス)」は、バージョン7.6.3以降でSSL-VPN(エスエスエル・ブイピーエヌ)のトンネルモードを全機種で廃止しました。テレワーク用にこの方式を使っている会社は、アップデート前に別の方式「IPsec-VPN(アイピーセック・ブイピーエヌ)」へ移しておかないと、設定ごと消えてしまいます。

結論:機器の買い替えは原則不要です。必要なのは「アップデートの前に」IPsec-VPNへ移す作業と、社員のパソコン側の設定変更です。業者に日程を決められる前に、この順番が守られているかを確認してください。

この記事では、何が起きるのか、いつまでに何をすべきか、見積もりでどこを見ればよいかを、社長・総務担当の方向けに順番に説明します。方式そのものの違いを知りたい方は、先にSSL-VPNとIPsec-VPNの違いと選び方をご覧ください。

うちのFortiGateは大丈夫?まず確認を
今のテレワーク接続がSSL-VPNなのか、アップデートで止まる設定なのかは、外からは分かりにくいものです。現在のVPN設定とFortiOSのバージョンを確認し、移行が必要かどうかをお伝えします。

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※移行が不要な場合は、正直に「不要」とお伝えします。
目次

結論:FortiOS 7.6.3にすると、SSL-VPNのトンネルモードは消える

Fortinet(フォーティネット)の公式リリースノートには、次のように書かれています。

  • FortiOS 7.6.3から、SSL-VPNのトンネルモードはIPsec-VPNに置き換えられる(対象:全FortiGate機種
  • 管理画面からもコマンドからも、SSL-VPNトンネルモードは設定できなくなる
  • それまでのSSL-VPNの設定は新しいバージョンに引き継がれない
  • リモート接続を止めないために、7.6.3へ上げる前にIPsec-VPNへ移行するよう求めている

「トンネルモード」とは、社員のパソコンにFortiClient(フォーティクライアント:社員PCに入れる接続アプリ)を入れて、社内のネットワークに丸ごとつなぐ使い方です。テレワークで「FortiClientを起動してつないでいる」なら、ほぼこれに当たります。

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FortiOSのバージョンSSL-VPN(トンネルモード)補足
7.4系使える【要確認:7.4系の最新パッチで、機種ごとに引き続き使えるか】Fortinetの告知ではサポート終了は2028年11月11日
7.6.0〜7.6.2使える(ただし40F・60F・61Fなどメモリ2GB以下の機種は不可)2GB以下の機種は7.6.0の時点でSSL-VPN(トンネル・Web両方)が廃止
7.6.3以降全機種で使えない設定は引き継がれない。移行先はIPsec-VPN

※出典:Fortinet FortiOS 7.6.0/7.6.3 Release Notes、Fortinet Community(CSB-260330-1)準拠

ブラウザだけで社内のシステムを開く「Webモード」は、7.6.3以降「Agentless VPN(エージェントレスVPN)」と名前を変えて残っています。ただし40F・60F・61F・90G・91Gなどでは使えません

移行せずにアップデートすると起きること

Ransomware Cyber Malware Attack. Ransom Virus Screen

怖いのは、アップデート作業そのものは「成功」に見えることです。FortiGate本体は普通に動き、社内のインターネットも使えます。止まるのは社外からの接続だけなので、気づくのは翌朝、テレワーク中の社員から連絡が来たときです。

ありがちな例(想定例):金曜の夜、保守業者が脆弱性対策として最新のFortiOSに更新。月曜の朝、在宅勤務の社員が全員つながらず、会社に出社して対応。元の設定は消えているため、すぐに元に戻すこともできない――という流れです。

  • テレワーク・出張先・自宅からの社内接続がすべて止まる
  • SSL-VPN用の設定(接続ルールなど)が消えるため、元のバージョンに戻しても自動では復旧しない
  • 社員のパソコンのFortiClient設定も作り直しが必要になり、復旧に時間がかかる

防ぐ方法はシンプルで、「IPsec-VPNで全員がつながることを確認してから、7.6.3以降に上げる」という順番を守ることです。

移行先の比較:IPsec-VPNで何が変わるか

Fortinetが移行先として案内しているのは、IPsec-VPNの中でも「IKEv2(アイクブイツー:接続の取り決め方式の新しい版)」+「TCP443番」という組み合わせです。443番は、普段のWebサイト閲覧と同じ出入口のこと。ホテルや取引先のWi-Fiなど、特殊な通信を止めがちな環境でもつながりやすい、というのがSSL-VPNの長所でしたが、この設定ならIPsecでも同じ出入口が使えます。

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項目SSL-VPN(トンネルモード)IPsec-VPN(IKEv2+TCP443)7.6.2以前に据え置き
7.6.3以降で使えるか使えない使える―(上げない前提)
使う出入口(ポート)TCP443番などTCP443番を設定可能今のまま
社員PCのアプリFortiClientFortiClient(TCP443番を使う場合は7.4.1以降)今のまま
社内ID・クラウドのログインとの連携今の設定SAML連携はIKEv2のみ対応。LDAP連携はFortiClient 7.4.3以降が必要今のまま
追加の機器原則不要(FortiGateの標準機能)不要
今後のセキュリティ修正新しいバージョンで受けられる新しい修正を受けられない

※出典:Fortinet「SSL VPN to IPsec VPN Migration FortiOS 7.6.0」、FortiOS 7.6.3 Release Notes準拠

「アップデートしなければいい」という考え方もありますが、おすすめしません。FortiGateはネットワークの門番です。門番のソフトを古いまま止めると、新しく見つかった弱点をふさげなくなります。据え置きは「移行の準備が整うまでの時間稼ぎ」と考えてください。

SSL-VPNとIPsec-VPNの安全性や設定の手間の違いは、SSL-VPNとIPsec-VPNの比較記事で詳しく解説しています。

逆算スケジュール:アップデート予定日から4週間前に動く

期限は「カレンダーの日付」ではなく、あなたの会社のFortiGateが7.6.3以降に上がる日です。保守業者が定期的に更新している場合は、まず次の更新予定日を聞いてください。そこから逆算します。

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時期やること担当
4週間前今のFortiOSバージョン、SSL-VPNを使っている人数・パソコン台数、ログイン方法(FortiGate内のID/社内サーバー/クラウドのID)を洗い出す会社+業者
3週間前今のバージョンのまま、IPsec-VPNの設定を追加する(SSL-VPNは残したまま)業者
2週間前一部の社員(2〜3名)のFortiClientをIPsec用に設定し、自宅などから試験接続業者+社員
1週間前全員のパソコンをIPsec用に切り替え。全員がつながることを確認業者+社員
当日FortiOSを7.6.3以降にアップデート業者
翌営業日社外からの接続を再確認。問題があれば業者へ連絡会社

※出典:Fortinet FortiOS 7.6.3 Release Notes(アップデート前の移行を推奨)準拠。各時期の配分は当サイトの目安

ポイントは「SSL-VPNを残したまま、IPsecを横に作って試す」ことです。いきなり切り替えないので、試験中に問題が出ても業務は止まりません。

移行の注意点:業者任せにしない4つのポイント

1. 「ログインの仕組み」によって必要な作業が変わる

社員がVPNにログインするときのID・パスワードを、どこで管理しているかで作業量が変わります。

  • FortiGateの中にIDを登録している:そのまま使える
  • 社内のサーバー(Active Directoryなど)と連携:FortiClient 7.4.3以降が必要になる場合がある
  • Microsoft 365などクラウドのログインと連携(SAML):IKEv2でしか使えない

2. 「社内宛てだけVPNを通す」設定が初期状態と違う

SSL-VPNは、社内宛ての通信だけVPNを通し、ほかのインターネット通信はそのまま出す設定(スプリットトンネル)が標準でした。IPsecは作り方によって初期状態が異なり、手動で作ると「すべての通信がVPN経由」になります。気づかないと「VPNにつなぐとネットが遅い」という新しい不満が出ます。

3. 社員のパソコンも1台ずつ設定が要る

FortiGate側だけでなく、社員のFortiClientもIPsec用に設定し直します。古いFortiClientはTCP443番に対応していないため(7.4.1以降が必要)、バージョンアップも含めて台数分の作業が発生します。なお、FortiClient 7.4.4以降は古い方式(IKEv1)に対応していないため、新しく作るならIKEv2一択です。

無料版の「FortiClient VPN」で今回の設定が使えるかは【要確認:無料版FortiClient VPNでIKEv2+TCP443番の接続が使えるか】です。台数が多い会社は、配布を一括で管理できる有償の管理ツール「FortiClient EMS」を使う方法もありますが、10〜30台程度なら必須ではありません。

4. 出入口(ポート)の重なりに注意

IPsecをTCP443番で動かすとき、今のSSL-VPNやFortiGateの管理画面が同じ443番を使っていると、設定の見直しが必要になる場合があります【要確認:SSL-VPN・管理画面とIPsec(TCP443番)のポートが重なる場合の設定変更の要否】。移行計画に含まれているか、業者に確認しておくと安心です。

VPNの設定変更を業者が遠隔でどこまで対応できるかは、機種や保守契約によって差があります。遠隔での設定変更やVPN運用のしやすさの違いは、Sophos XGとFortiGateの運用・保守コスト比較が参考になります。

移行の見積もり、その金額は妥当ですか?
「この機会に本体も入れ替えましょう」「新しいリースに組み直しましょう」と提案されていませんか。今回の移行は、原則として設定作業だけで済みます。届いた見積もりやリース契約の中身が適正か、中立の立場で確認します。

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※しつこい営業電話は一切いたしません。
※メーカーや販売店に縛られない立場で、必要なもの・不要なものをお伝えします。

費用の目安:5年総額で「何にお金がかかるか」

今回の移行でかかる費用は、主に作業費です。機器代は原則かかりません。金額は会社の人数やログインの仕組みで大きく変わるため、ここでは見積もりで確認すべき項目を整理します【要確認:移行作業費・FortiClient EMSライセンスの実勢価格の目安】。

費用の項目 必要か 見積もりで確認すること
FortiGate側のIPsec設定作業 必要 SSL-VPNを残したまま並行して作る手順になっているか
社員PCのFortiClient設定・更新作業 必要 何台分が含まれているか。訪問か遠隔か
試験接続・切り替え当日の立ち会い あった方がよい 試験日が設けられているか
FortiClient EMS(一括管理ツール) 台数が多い場合のみ 小規模なのに必須として入っていないか
FortiGate本体の入れ替え 原則不要 本体のサポート期限など、入れ替えの理由が別にあるか
保守契約・リースの組み直し 原則不要 移行を理由に契約期間が延びていないか

※出典:Fortinet「SSL VPN to IPsec VPN Migration FortiOS 7.6.0」、FortiOS 7.6.3 Release Notes準拠。費用項目の整理は当サイトによるもの

5年で見たときに一番大きな差がつくのは、作業費ではなく「ついでの入れ替え」や「リースの延長」です。本体のサポート期限が近い場合は、移行とまとめて入れ替えた方が作業が1回で済むので合理的です。逆に、期限に余裕があるなら入れ替えは不要です。本体の期限は【要リンク確認:FortiGate本体のサポート期限(EOL)の記事】、後継機の価格は【要リンク確認:FortiGate 50G/70Gの製品DBページ】で確認できます。

リースの中身に不安がある方は、【要リンク確認:UTMのリース・保守契約の見直し記事】もあわせてご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q. FortiGateを使っていれば、すべての会社が影響を受けますか?

SSL-VPNのトンネルモード(FortiClientを使ってつなぐ方式)でテレワークをしている会社が対象です。FortiOS 7.6.3以降にアップデートすると全機種でこの機能が使えなくなり、設定も引き継がれません。VPNを使っていない会社や、すでにIPsec-VPNでつないでいる会社は、この変更の直接の影響はありません。

Q. UTM本体の買い替えは必要ですか?

この変更だけを理由に買い替える必要は原則ありません。移行先のIPsec-VPNはFortiGateの標準機能です。ただし本体自体のサポート期限が近い場合は、移行とまとめて検討した方が作業が1回で済みます。

Q. アップデートしなければ、今のまま使えますか?

FortiOS 7.6.2以前に留めればSSL-VPNは動きます。ただし新しいセキュリティ修正は新しいバージョンで配布されるため、古いバージョンに留め続けるのはおすすめしません。据え置きは移行の準備が整うまでの時間稼ぎと考えてください。

Q. 社員のパソコン側の作業は必要ですか?

必要です。接続アプリFortiClientの接続設定をIPsec用に作り直します。Fortinetの移行ガイドでは、TCP443番を使う接続にはFortiClient 7.4.1以降が必要とされています。台数分の作業が発生するため、見積もりの際は何台分が含まれているかを確認してください。

Q. 業者に移行を頼むとき、何を確認すればよいですか?

3点です。アップデート前にIPsecへの移行を済ませる段取りになっているか、社員のパソコン側の設定作業が見積もりに含まれているか、切り替え前に一部の社員で試験接続する日を設けているか。この3点が曖昧なまま日程だけ決まっている場合は注意が必要です。

まとめ

覚えておくべきことは3つです。

  • FortiOS 7.6.3以降、SSL-VPNのトンネルモードは全機種で廃止。設定は引き継がれず、移行しないまま上げるとテレワークが止まる
  • 順番は「IPsecで全員つながる → それからアップデート」。SSL-VPNを残したまま並行して試すのが安全
  • 機器の買い替えやリースの組み直しは原則不要。見積もりに入っていたら、その理由を確認する

そもそもSSL-VPNとIPsec-VPNがどう違うのかを押さえておきたい方は、SSL-VPNとIPsec-VPNはどっちを選ぶ?もあわせてお読みください。

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