「NASはRAID 5だから、ハードディスクが1台壊れても大丈夫です」。
導入時に業者からそう説明され、数年間そのまま使い続けている中小企業は珍しくありません。
ところが、RAID 5は「絶対にデータが消えない仕組み」ではありません。実際には1台のHDDが故障したあと、新しいHDDへ交換してRAIDを再構築している途中で別のHDDに障害が発生し、NAS全体のデータが読み出せなくなるケースがあります。
復旧まで数日かかれば、納期遅延や取引先からの信用低下につながります。ランサムウェア被害まで重なれば、単なる機器故障では済まず、取引停止や情報漏えい対応まで発展する可能性があります。
この記事では、RAID 5の再構築中にデータが消える理由、データ復旧費が200万円規模まで膨らむ原因、NASの適正なバックアップ構成、導入費・保守費・リース総額まで、社長自身が見積もりを判断するためのポイントを解説します。
NASのバックアップ、本当に復元できますか?
RAID構成・バックアップ先・保守費・リース総額まで確認し、
過剰な構成や見落としているリスクがないか専門家が診断します。
※他社の見積もり・構成のセカンドオピニオンも歓迎です。
※不要な機器交換や過剰スペックを前提としたご提案はいたしません。
RAID 5なのにデータが消えるのはなぜか

RAID 5はバックアップではない
最初に理解しておきたいのが、RAIDとバックアップは別物だという点です。RAID 5は複数のHDDへデータとパリティ情報を分散して保存し、基本的には1台のHDDが故障してもデータへアクセスできる状態を維持する仕組みです。
ここで「1台壊れても大丈夫なら、データは消えない」と誤解する企業が多くあります。しかしRAIDが主に守っているのは、1台のHDD故障に対する可用性です。
社員が重要なフォルダを削除した場合、削除内容もRAIDへ反映されます。ランサムウェアによってファイルを暗号化された場合も、暗号化された状態が各HDDへ反映されます。
NAS本体の基板故障、複数HDDの同時障害、落雷、火災、盗難などでもRAIDだけでは対応できません。
| トラブル | RAID 5 | 別バックアップ |
|---|---|---|
| HDD1台故障 | 対応できる可能性が高い | 復旧可能 |
| 複数HDD故障 | 復旧困難 | 復旧可能 |
| 誤削除 | 基本的に戻せない | 世代管理があれば戻せる |
| ランサムウェア | 暗号化される可能性あり | 隔離されたバックアップなら復旧可能 |
| NAS本体故障 | 停止する | 別環境から復旧可能 |
最も危険なのは再構築中
RAID 5では1台のHDDが壊れると、新しいHDDへ交換してRAIDを再構築します。この作業をリビルドと呼びます。
問題は、この再構築時に残っているHDDへ大きな読み取り負荷がかかることです。4台のHDDを同時期に購入して5年間使っている場合、1台だけが古いわけではありません。残り3台もほぼ同じ時間稼働しています。
1台目が寿命に近づいて故障した時点で、他のHDDも劣化している可能性があります。その状態で大量の読み取りを行い、別HDDにエラーが発生すると、RAIDを再構築できなくなることがあります。
「HDDを1台新品に交換したから安心」ではありません。むしろ交換後の再構築が完了するまでが、事故につながりやすい時間帯です。

データ復旧費が200万円規模まで膨らむ理由
HDD交換だけでは直らない障害がある
NASの故障で高額な復旧費が発生するのは、単純なHDD交換で直せない状態になったときです。複数HDDの物理障害、RAID情報の破損、大容量データの解析などが重なるほど復旧作業は難しくなります。
さらに「今日中に見積書を取り出したい」「明日の納品に必要な図面が入っている」となれば、緊急対応を依頼することになります。通常対応より優先度の高い作業となり、費用が上がるケースもあります。
仮に社員40名の会社で、4台構成のRAID 5 NASを長期間使用していたとします。1台のHDDが故障し、交換後の再構築中に別HDDまで読み込めなくなりました。
しかも別媒体への正常なバックアップがありません。顧客資料、契約書、写真、設計データなどがすべてNASに入っていれば、会社側は高額でもデータ復旧を依頼せざるを得なくなります。
障害の重さ、HDD台数、容量、復旧難易度、緊急性によっては、復旧費が100万円を超え、200万円規模まで膨らむこともあります。
本当の損失は復旧費だけではない
社長が見るべきなのは、復旧会社へ支払う金額だけではありません。NASが停止している間、社員が仕事を進められない損失も発生します。
- 見積書や契約書を開けない
- 設計データや写真を確認できない
- 取引先へ資料を送れない
- VPN経由の社員が仕事を進められない
- 納期が遅れて顧客対応が発生する
社員40名が丸1日まともに働けないだけでも、人件費と機会損失は小さくありません。数日間停止すれば、200万円の復旧費より業務停止の損害が大きくなる可能性もあります。
高額なデータ復旧を避けるために必要なのは、200万円する高性能NASではありません。故障前から別の場所へデータをコピーし、実際に戻せる状態にしておくことです。
中小企業で必要なNASバックアップ構成

「NASの中にコピー」では不十分
バックアップを確認すると、「NAS内の別フォルダへコピーしています」と回答する会社があります。しかしNAS本体が故障すれば、そのコピーにもアクセスできません。
同じNAS内に保存場所を2つ作っても、物理的には同じ機器へ依存しています。最低でもNASとは別の機器やクラウドへコピーを持つ必要があります。
たとえば次のような構成です。
- 業務データは社内NASへ保存
- 夜間に別NASまたはUSB HDDへバックアップ
- さらに重要データをクラウドへ保存
- 複数世代を残して過去の状態へ戻せるようにする
- 定期的に実際の復元テストを行う
ここで注意したいのが、「バックアップ成功」と表示されていても安心できないことです。保存対象の指定が間違っていたり、容量不足で数カ月前から停止していたりするケースがあります。
ランサムウェアではバックアップ先まで考える
NASとは別の機器へバックアップしていても、その機器へ社員PCから常時書き込みできる構成では、ランサムウェアの影響を受ける可能性があります。
そのため重要データについては、世代管理、アクセス権、スナップショット、クラウドバックアップなどを組み合わせます。
ただし社員10名の会社と100名の会社で同じ構成にする必要はありません。重要なのは高価な機能をすべて導入することではなく、「どこまで戻せれば業務を再開できるか」を決めることです。
| 構成 | 危険度 | 判断 |
|---|---|---|
| RAID 5のみ | 高い | 別バックアップが必要 |
| NAS内コピーのみ | 高い | 本体故障に弱い |
| 別NASへバックアップ | 中 | 機器故障対策として有効 |
| 別NAS+クラウド | 低い | 災害・ランサム対策もしやすい |

NAS導入費は本体価格だけで判断しない
本体価格・実勢価格・設定費を分ける
NASの見積もりでよくある失敗が、「本体30万円だから高い」「月額1万円だから安い」と判断することです。
実際の導入費には、NAS本体だけでなく、HDD、設定、データ移行、バックアップ、保守、ライセンスなど複数の費用が含まれます。
| 項目 | 確認するポイント |
|---|---|
| 本体価格 | NAS本体とHDDの型番・台数 |
| 実勢価格 | 市場価格との差 |
| 設定費 | 共有・権限・通知・バックアップ設定 |
| VPN設定費 | 新規構築か既存設定変更か |
| 保守費 | 電話受付だけか、現地対応まで含むか |
| ライセンス費 | 月額・年額・更新価格 |
| 導入総額 | 初年度に支払う合計額 |
たとえばNAS本体とHDDの実勢価格が20万円でも、データ移行、バックアップ設定、権限設定、現地作業まで含めれば40万円、50万円になることはあります。
反対に「NAS一式60万円」としか書かれていなければ、適正価格か判断できません。本体、HDD、設定、移行、保守を分けた見積書を出してもらった方が比較しやすくなります。
VPN設定費がある場合は作業内容を見る
拠点間VPNやテレワーク環境からNASへアクセスしている会社では、NAS交換に伴ってVPNルーターやUTMの設定変更が必要になることがあります。その場合、VPN設定費が発生しても不自然ではありません。
ただし「VPN設定費10万円」とだけ書かれている場合は、内容を確認してください。新規VPN構築なのか、IPアドレス変更だけなのか、切り戻し作業まで含むのかで作業量は大きく違います。
安さだけで依頼すると、設定変更後にVPNがつながらず、拠点間通信まで止まることがあります。NAS交換とネットワーク設定を同時に行う場合は、障害時の切り戻し手順まで確認しておく必要があります。
見積もりは「NAS一式」で比較せず、本体価格・実勢価格・設定費・VPN設定費・保守費・ライセンス費まで分解してください。
NASのバックアップ、本当に復元できますか?
RAID構成・バックアップ先・保守費・リース総額まで確認し、
過剰な構成や見落としているリスクがないか専門家が診断します。
※他社の見積もり・構成のセカンドオピニオンも歓迎です。
※不要な機器交換や過剰スペックを前提としたご提案はいたしません。

保守契約とリース契約で損しないための確認点

保守は金額より対応範囲を見る
年間保守費が高いか安いかは、金額だけでは判断できません。故障受付だけの保守と、監視、代替機、現地対応、バックアップ復元まで含む保守では内容が違います。
特に注意したいのが、「保守に入っているからデータも戻してくれる」と思い込むことです。メーカー保守では、壊れた機器の修理や交換だけが対象で、データ復旧は対象外というケースがあります。
契約前に次の点を確認してください。
- 障害時の受付時間
- リモート対応か現地対応か
- 代替機を用意してもらえるか
- 設定復旧まで含まれるか
- バックアップ復元まで対応するか
「故障した場合、何時間以内に誰がどこまで戻すのか」が説明できない保守は、期待している内容と実際の契約がずれている可能性があります。
リースは月額ではなく総額を見る
NAS、UTM、VPN機器などでは、「月々の支払いを抑えられます」とリースを提案されることがあります。
たとえば月額1万5,000円でも、60カ月なら総額90万円です。月額2万円なら5年間で120万円になります。
| 契約例 | 月額 | 5年間総額 |
|---|---|---|
| プランA | 10,000円 | 600,000円 |
| プランB | 15,000円 | 900,000円 |
| プランC | 20,000円 | 1,200,000円 |
営業担当者から月額だけを提示された場合は、必ず契約期間全体のリース総額を出してください。
さらに、ライセンスや保守が別料金なら、それも加えて5年間の総支払額を比較します。買い取りより高くても、保守や交換サービスが含まれているなら合理的な場合があります。
問題なのは、月額だけを見て総額を確認せず契約することです。

まとめ|RAID 5の故障を200万円の事故にしないために

RAID 5は便利な仕組みですが、バックアップではありません。1台のHDD故障には対応できても、再構築中の追加障害、誤削除、ランサムウェア、NAS本体の故障まで防ぐことはできません。
データを失ってから復旧会社へ依頼すれば、障害内容によっては100万円、200万円規模の費用が発生する可能性があります。それでも必要なデータがすべて戻る保証はありません。
まず確認するのは機器価格ではなく復旧方法
- NASとは別の場所にバックアップがあるか確認する
- バックアップから実際にファイルを復元できるか試す
- 障害通知を誰が確認するのか担当者を決める
見積もりを受け取ったら、本体価格、実勢価格、設定費、VPN設定費、保守費、ライセンス費、導入総額、月額換算、リース総額まで分解してください。
そのうえで、「この費用を払うことで、何のリスクが減るのか」を一つずつ確認します。
高いNASを買うことが目的ではありません。NASが故障しても、業者が変わっても、ランサムウェア被害が発生しても、会社の重要データを戻せる状態にしておくことが目的です。
結論は「RAID 5を使わない」ではありません。「RAID 5だけに会社のデータを預けない」ことです。NAS全損を前提に、別バックアップと復旧手順まで用意されているかを確認してください。
NASのバックアップ、本当に復元できますか?
RAID構成・バックアップ先・保守費・リース総額まで確認し、
過剰な構成や見落としているリスクがないか専門家が診断します。
※他社の見積もり・構成のセカンドオピニオンも歓迎です。
※不要な機器交換や過剰スペックを前提としたご提案はいたしません。

